開催報告:4/22子どもの権利条約日本批准30周年記念イベント「子どもの権利と私たち~子どもの権利を推進するために、おとなができること~」

広げよう!子どもの権利条約キャンペーン(以下、キャンペーン)では、1994年に日本政府が国連子どもの権利条約を批准して30年目となる今年4月22日(批准日)に、イベントを開催しました。

本イベントでは、子どもの権利の保護・充足・救済とその普及に取組んできた8名の登壇者と共に、この30年を振り返りながらこども基本法施行をうけて大切にしたい視点、活かしたい機会などが報告されました。また本キャンペーンの「子どもメガホンプロジェクト」で実施したアンケートを基に作成した提言書も発表し、今後日本全体での子どもの権利推進、市民社会団体のエンパワーメントにつなげていこうとする機運が高まる機会となりました。

当日は、メガホンプロジェクトの子どもメンバー、賛同団体であるNGO/NPO、行政・教育関係者を含めのべ164名、また報道関係者10名、キャンペーン関係者16名が参加しました。

開会あいさつ・広げよう!子どもの権利条約キャンペーン紹介

はじめに、本キャンペーン共同代表、(特活)国際子ども権利センター(シーライツ)代表理事の甲斐田 万智子さんから、本キャンペーンの説明と活動ロードマップについて報告がありました。

  • キャンペーンでは、日本社会において子どもの権利の概念が浸透し、周知されること、そして自治体や国レベルで総合的で包括的な政策ができることを目指してきた。子どもの権利を基盤とした基本法の成立は、2022年の「こども基本法」の成立が大きな成果だった。キャンペーン活動の中では、子どもの声を聴く「子どもメガホンプロジェクト」を立ち上げて全国の子どもにアンケートを実施するなどした。今後は国連子どもの権利委員会に子どもレポートを出す取り組みも進めていきたい。
  • こども基本法が成立し、今後は自治体レベルでの取り組みが重要になる。自治体が作るこども計画の中に、子どもの声を聴くメカニズムをどのように取り入れるべきか、また、学校現場において子どもの権利条約に基づく教育や学校運営がなされることを目指していきたい。そして、こども基本法改正と同時に子どもコミッショナーの設置法案成立も目指して、キャンペーンは2029年まで活動を継続する予定。

子どもが権利を使うことができる社会をつくるために~子どもの声からの提言~

本キャンペーン実行委員の山内 澄子さん((公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部)より子どもメガホンプロジェクトの活動が報告されました。

●子どもメガホンプロジェクトとは、子どもたちをとりまく問題を国や社会に伝えてみたいという思いを持った全国10~18歳の子どもたちによるプロジェクト。2023年の5月から2024年3月までの間、何度もオンラインで集まり、子どもの権利や子どもの権利条約について、また日本の子どもたちが抱えている課題について学びながら、子どもの声を集め、その声を政策決定者に届ける提言活動を行ってきた。

●アンケートを基に作成した提言書の主要な内容は以下の4つ。
1)学校で、子どもの権利についてちゃんと教えてください
2)学校で、子どもの権利が守られるようにしてください
3)子どもがのびのびと安心して意見を言える環境づくりをしてください
4)子どもが安心して相談できるしくみを広げてください

また、全国 1,410 人の子どもの声を集めたアンケート「全国子どもアンケート:みんなの今を教えて~子どもの権利、知ってる?~」がもとになって作られた提言書(*1)について、子どもメガホンプロジェクト子どもメンバーのkotoneさんから報告されました。

  • 提言の内容が実行されるために、学校での権利保障を求める活動と、自治体が子どもの声を聴く取り組みを一層推進することが大切になる。学校で子どもの権利が守られるために、校則が子どもの権利を尊重したもので、子どもが納得できる内容であることが大切。
  • 子どもが自由に意見を表明する権利が使え、意見を正当に重視される権利が守られるためには、あらゆる場所で、子どもが安心安全に意見や感情を伝えることができる環境を推進する事、そして、おとながその声に対して応答責任を果たすことが重要。

(*1)提言書「子どもが権利を使うことができる社会をつくるために~子どもの声からの提言~」

オンライン座談会

オンライン座談会では、8名の登壇者と共に、子どもの権利を軸に様々な分野・視点から、この30年を振り返ってこれまでの進展や今後の課題、またこども基本法施行をうけて大切にしたい視点、活かしたい機会などが報告されました。

発題「30年を振り返って~進展と残された課題~」
平野 裕二さん(広げよう!子どもの権利条約キャンペーンアドバイザー)

  • 1994年4月22日に日本が子どもの権利条約を批准してから30年。批准の時点では法改正はなかったが、児童買春・児童ポルノ禁止法制定、児童虐待防止法制定、体罰の全面禁止など子どもに対する暴力への取り組みが本格化した。
  • 国連子どもの権利委員会による審査でたびたび強く勧告されてきた「子どもの権利に関する包括的法律」の採択の検討は、2022年のこども基本法・こども家庭庁発足、2023年のこども大綱閣議決定により大きく前進した。
  • 今後の課題としては、権利を基盤とする施策のさらなる推進、子どもの権利に関する広報・啓発、学校に子どもの権利を根づかせること、子どもに対する暴力への対応、差別解消のための取り組み、相談・救済体制の整備、子どもコミッショナーの設置、国際連携・協力のさらなる推進が挙げられる。

報告「こども1万人意識調査から見えた日本のこどもの現状」
高橋 恵里子さん(日本財団 公益事業部 子ども事業本部長)

  • 日本財団の事業のひとつとして社会的養護に取り組んでいる。社会的養護では子どもの権利と親の権利が対立することがよくある。子どもの権利を総合的に保障する法律がないことが問題と考え、こども基本法の成立に向け取り組んできた。
  • 2023年に、こども1万人意識調査を実施した。今後のこども大綱やこども施策にこどもたちの意見を反映することなどが目的。調査にあたり海外の事例を参照したが、海外と日本では子どもの権利教育の状況や子どもの権利の認知度に大きな差があると感じた。
  • 調査結果より、こども基本法は成立後間もないわりには認知度が高かったが、子どもの権利条約は成立後長い時間が経っているにもかかわらず認知度が低かった。「学校や家庭にのぞむこと」の回答結果から、教育に関するプレッシャーの大きさが見受けられた。子どもの権利について教育現場での子どもの権利の尊重、学校で教えると良いとの意見も。教育の無償化について求める声も多かった。
  • 調査結果からの提言は日本財団のホームページで閲覧可能。結果を広く知らせる取り組みを今後も続けたい。

「国際的な潮流と子どもの権利宣言100周年に向けて」
山内 澄子さん((公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部)

  • セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利の実現を目指して100年以上活動する子ども支援専門の国際NGO。1923年に子どもの権利についての世界初の公式文書とされる「ジュネーブ子どもの権利宣言」の草案をつくったのが、セーブ・ザ・チルドレン創設者のエグランタイン・ジェブ。子どもの権利条約は1924年に採択され、2024年に100周年を迎える。
  • 世界の子どもたちは今、大きな脅威に直面している。新型コロナウイルス、紛争、気候変動といった子どもの権利を脅かす3つの波が、子どもたちが直面する不平等を悪化させている。このため、2030年までに、最も弱い立場に置かれた子どもたちの権利を守るためのセーブ・ザ・チルドレン・インターナショナルのグローバル戦略を定め、活動を行っている。
  • 子どもの権利条約フォーラム2024in東京を2024年11月9-10日に立教大学池袋キャンパスにて開催予定で、現在準備を進めているところ。本キャンペーン実行委員会との共催で、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが事務局を務める。ジュネーブ宣言100周年、日本政府の条約批准30周年という大事な年なので、日本で子どもの権利が守られるために、これから何をしていけばよいのかを考える機会と捉え、一緒につくりあげていきたい。ぜひご参加頂きたい。

「チャイルドラインの活動を通じて考える、子どもの権利を守るためにおとなができること」
高橋 弘恵さん(チャイルドライン支援センター 常務理事)

  • チャイルドラインの活動の中から見えてきた子どもたちの声を紹介したい(チャイルドラインのこども向けホームページ)。
  • コロナ禍で電話窓口を縮小せざるを得なかったことから、「つぶやく」というページを追加した。匿名の目安箱(アンケート)も実施している。子ども自殺をなくすためにおとなにできることがある・あるかもしれないと答えた回答の中では、子どもの話をきく、否定せずにきく、という答えが最も多く寄せられた。
  • チャイルドラインに寄せられた意見を四半期ごとにデータとしてまとめている。2023年第3四半期では、希死念慮をテーマとし、希死念慮が増えてきていることが見受けられた。おとなの問題、社会の問題を自分のこととして受け止めているのかもしれない。子どもをエンパワーできる聞き方ができるおとなを社会に増やしていきたいし、チャイルドラインもそういう存在でありたい。

「今が作り時?自治体の子どもの権利条例でできること」
林 大介さん(子どもの権利条約ネットワーク 事務局長)

  • 子どもの権利に関する条例は大きく4つに分類される。「青少年の健全育成に関する条例」「子どもの権利に関する条例」「子ども・子育て支援に関する条例」「子どもに関する個別条例」。
  • 「子どもの権利に関する条例」は、2023年5月現在、64自治体が制定(※補足修正 2024年4月時点で69自治体が制定。詳しくは、子どもの権利条約総合研究所のウェブサイトでご確認ください。) こども基本法施行(2023年4月)をうけ、各地で条例の制定化の動きが進んでいる。「子ども・若者総合計画」もこども基本法第9条に定められている。計画の改定時期との兼ね合いなどで、条例と計画、どちらが先に制定されるかは自治体次第。
  • これからの課題は、子どもの意見表明・参加のすすめ方(現行の仕組みの改善+新たな仕組みの構築、対象/代表者性など)、おとな(国会議員・行政職員)として「子どもの声」を聴くことの必要性の理解とスキルの向上・トレーニング、子どもに対する必要な情報提供、意見表明・参加を行うトレーニングや機会の創出などが挙げられる。

「教育現場における民主主義と子どもの権利」
室橋 祐貴さん(日本若者協議会 代表理事)
 

  • 「学校内民主主義」実現に向けて取り組んでいる。その理由は、子どもの権利を保障するため、また学校で民主主義を実践することが社会参加・政治参加において重要なため。
  • 日本の若者は、そもそも身近な社会(学校)さえ変えられると思っていない。現状は、義務教育課程で子どもの権利(意見表明権)が重視されておらず、義務教育を通して「自分は声を上げても意味がない」と感じ、子どもたちは、社会参加への行動を起こさなくなってしまっている(学習性無力感に陥っている)。
  • 文科省への提言、「校則見直しガイドライン」策定など働きかけを行っている。2022年12月文科省「生徒指導提要改訂」、教育関連の計画に「子どもの権利尊重」や「生徒の声の尊重」が盛り込まれるなど、変化もみられる。一方、教育関連法規に「子どもの権利」が位置づけられていないのが課題。子どもの権利保障を「制度化」していくためには、法律に書き込んでいく必要性がある。

「変わった?変わらない?子どもの権利に基づいた子育てと虐待防止」
高祖 常子さん(児童虐待防止全国ネットワーク 理事)

  • 虐待死をなくしたい!子どものへの体罰・暴力の法的禁止を求める署名が、2019年2月3日にスタートし10日で2万人の署名が集まり、超党派の「児童虐待から子どもを守る議員の会」に手渡した。それが体罰禁止を法律上明記することにつながった。児童福祉法・児童虐待防止法の改正案に親による体罰禁止も明記された。
  • しかし、その後の調査において、法改正の認知は2割にとどまり、子どもへの体罰を容認している人は4割、過去6ヶ月以内にしつけとして体罰をした養育者は33.5%、体罰を与えた後、しなければよかったと思った養育者は88.7%という結果だった。
  • こども家庭庁・こども基本法ができても虐待相談対応件数は未だ多い。今後、日本社会における子どもへの体罰・暴力をなくすための取り組みを引き続き進めたい。

「日本で子どもアドボカシーを根付かせるには」
堀 正嗣さん(子どもアドボカシー学会 会長)

  • 子どもの権利条約の一般原則のひとつである子どもの意見表明権の保障(12条)が子どもアドボカシーの拠り所。子どもアドボカシー=マイクになること。子どもアドボケイトについては、YouTubeのアドボケイト説明アニメをぜひ見てほしい。
  • 子どもアドボカシーを広めるためには、子どもアドボケイトを増やすことが必要。講座を開催し、養成に取り組んでいる。子どもアドボカシー事業の要件としては、独立性、専門性、市民性、権限が必要。現状、子どもアドボカシーセンターに委託、子どもの権利に関する活動を行ってきた民間団体(チャイルドライン・CAP等)に委託、専門職団体(弁護士会・社会福祉士会等)に委託、大学に委託、行政が直接事業を運営、などの方法で子どもアドボカシーが行われている。
  • 子ども福祉の分野、特に社会的養護の現場での取り組みが進んでいるが、学校でも進めることが求められる。

パネルディスカッション

岩附 由香さん((特活)ACE 代表 / 広げよう!子どもの権利条約キャンペーン共同事務局)がモデレーターとなり、それぞれの登壇者に質問が投げかけられ回答をいただきました。

○高橋 弘恵さん(チャイルドライン支援センター 常任理事)
Q 希死念慮というキーワードであるが、この部分について社会全体としてどのような取り組みが出来るのか?
A 子どもの気持ちを聴くおとなの姿勢が大切。「そんなこと考えるな」、「そんなもんだよ」という言葉で一般化するのではなく、まずは、子どもの状態をそのまま受け止め、そこから会話を始めることが重要だ。世の中に多様な感じ方、意見があるのは当たり前で、それは子どもの世界でも同様。何でも話せるような雑談ができる関係性をつくることも大事である。

○林 大介さん(子どもの権利条約ネットワーク 事務局長)
Q 自分の自治体にも子どもの権利条例をつくりたい場合、まずは何から始めるとよいのか?
A まずは議員に働きかけること。行政側の子ども関係部署とつながることも大切。市民としては、仲間を集めてグループで働きかけることが重要になる。また条例はできればよいというものではなく、中身が大切であり、施行後も市民が関心をもって関わり続けることが求められる。

○室橋 祐貴さん(日本若者協議会 代表理事)  
Q 政治的有効性感覚、学習性無力感、というキーワードが出て、今後、教育関連の法律を変えるということが大事ということだった。その上で、障害になる事や大切な機会となっていることは?また学校に変化を求めるときに、どのように応援できるのか?
A 学習指導要領の見直しが始まっているので、この機会をとらえて子どもの権利が入るように、皆で問題提起をして機運を高めていくことが大切。保守系の人たちにとって、「権利」と書き込むことに抵抗があるようだが、不登校や自殺など、子どものおかれている状況は厳しく、実態も併せてしっかり伝え、理解してもらう事が重要だと思う。子どもの権利に関わる活動をしている皆で、一緒に声を上げていきたい。

○kotoneさん(子どもメガホンプロジェクト)
Q 日本若者協議会の話は、子どもメガホンプロジェクトの提言の発表内容とも重なる。kotoneさんからみて、子ども達が普段思っていることや希望があれば。
A 学校で校則の話をしても、先生たちに聴いてもらえないことがある。「子どもの権利」という言葉がきちんと指導要領など学校の現場にも入ってくれば、学校の先生たちに校則のことについて伝えるときに、それが後ろ盾になると思う。

○高祖 常子さん(児童虐待防止全国ネットワーク 理事)
Q 体罰禁止の法律が改定されたが、そのことを知っている人が増えていない。浸透させていくためにどのようなチャンネルが必要になるのか?
A 法律ができたことは大きいが、PRされていないのが現状。広く知ってもらうためには、様々な取り組みの中に組み込んで周知していくことが必要。オランダでは、3、4歳児であっても、おとなと子どものコミュニケーションの時間を大切にしている。幼児教育や、学校教育の場でも、体罰ではなくこうしたコミュニケーションが当たり前に取り入れられるようにしていかななければならない。

○堀 正嗣さん(子どもアドボカシー学会 会長)
Q 子どもアドボケイトをこれから導入する自治体も多いと思うが、そうした兆しが未だみられない地域では、どのような行動が求められるのか?
A 制度が一度できると形骸化する危機もはらんでいる。児童相談所では、子どもアドボケイトが子どものスピークアウトや権利主張を支援するのではなく、ヒアリングの代替要員に使われていていることもある。アドボカシーの仕組みが良いものとなり前に進んでいくためには、独立性と専門性がある民間の子どもアドボカシーセンターが地域に定着し、そこから行政に声を上げていくという事が大切。

最後に、本キャンペーンアドバイザーの平野さんより、被害を受けている人たち、しんどい思いをしている人たちの声を聴きながら、法改正や仕組みづくりに結びつけることが大切であること、そして、今後も大規模なアンケート調査の実施や、その声を改革に結びつけるために、コミッショナー制度が重要になることが伝えられました。

ブレイクアウトセッション

第2部では、参加者の住んでいる地域毎に分かれてブレイクアウトセッションを実施し、それぞれの感想やこれから自分で取り組んでいきたいことなどを話し合いました。

参加者アンケートから 

  • 子どもたちの圧倒的な声として「自分たちの声が聞かれていない」という状況があるということが強く印象に残りました。やはり、おとな(親、学校の先生、行政など全般的に)の子どもの声を受け止めるスキルの向上が重要であると考えました
  • 教育現場で生まれてしまうことが多い「学習性無力感」は本当に悲しすぎるので、大人が子どもの声に耳を傾け、否定せずに受け止めることの大切さを身近な人たちと共有していきたいと改めて思いました。
  • 学校におけるアドボカシーが考えられていることに共感。子どもの権利、意見表明支援等の動きがない地域は、行政指導になりがち・・。
  • 子どもアドボケイト養成講座修了者が1,000名を超えて、現在も講座募集が行われていることがわかり、嬉しく思いました。子どもの権利条約普及、意見表明支援事業、条例作成等に取り組む人の養成が一番大事だと思っています。引き続き努力していきましょう。

運営メンバー:(組織名、五十音字順)
岩附・杉山・成田(ACE)、甲斐田(C-Rights)、中島(FTCJ)、内山(IPA)、高橋(KNC)、林(NCRC)、佐藤・矢部(PIECES)、武田・平家・山内(SCJ)、高橋・山下(WVJ)

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