12/1院内集会「今こそ『子どもに関する基本法』の制定を!~子どもとともに~」報告

12月1日(水)、広げよう子どもの権利条約キャンペーン(以下、キャンペーン)では、子どもの権利に関する基本法についての提言内容や子どもの意見を、国会議員に届けるための院内集会(参議院議員会館)を開催しました。当日は、国会議員7名・秘書9名、報道関係者2名、オンライン参加者約40名が参加しました。

本集会は、ユニセフ議員連盟、超党派ママパパ議員連盟、Children Firstの子ども行政のあり方勉強会、児童の養護と未来を考える議員連盟、子どもの貧困対策推進議員連盟からの後援、日本弁護士連合会、日本財団からの 協力、認定特定非営利活動法人OurPlanet-TVからの協賛を頂き、開催することができました。心より感謝申し上げます。

まず初めに、甲斐田万智子(キャンペーン共同代表、国際子ども権利センター(シーライツ)代表理事、文京学院大学教授)からの挨拶から始まりました。

  • 一昨日前に子ども政策に係る有識者会議の報告書が出ており、そこに子どもの権利も言及されていたのはよかった。私たちは子どもとともに主張をしている。子ども不在の中できめるのではなく、子どもと一緒に訴えていきたいと考えている。

また野田聖子こども政策担当大臣をはじめ、出席した国会議員からも挨拶を頂きました。

子どもの権利保障に向けた提言と子どもに関する基本法に求めること

次に岩附由香(キャンペーン事務局、認定NPO法人ACE代表)より、11月20日の世界子どもの日に発表した提言書について説明しました。

  • 提言書で挙げている新しい組みづくりは以下の3点。提言書には他に大切にしたいことを4つ挙げており、ここでは説明は省略するので提言書を確認ください。
    1.子どもの権利をどんな場面でも大切にすることを約束する「子ども基本法」をつくる
    2.子どもの権利を実現するために、国が行うことを全体的に見てすすめる役割ができる国の機関をつくる
    3.子どもの権利が守られているかを確認・監視する仕組みをつくる
  • 提言書の作成過程で子どもの意見を何度か聞いており、それを一部掲載している。
  • 11月に川崎で開催された「子どもの権利条約フォーラム」の分科会では「子ども庁の議論が進んでいるので嬉しいけど、寂しさもあった。学校のクラスメイト達は知らされていない。子どものことなのに子ども自身が知らされていない」という子どもの声があったという。また「子どもの権利条約は学んだけど、途上国の子どものことだと理解していた」「コロナの時も学校の一斉休校があったときは、子どもの意見も聞いてほしかった。」という声もあり、子どもたちが自分に権利があることを認識することが重要である。
  • 日本は少子化の中で子どもの割合はマイノリティになってきており、また子どもの精神的ウェルビーイングが悪化している。これは子どもの権利の問題ではないか。女性や障がい者の分野は国際条約に批准してから国内で基本法ができたが、子どもの権利は条約を批准しているのに基本法がまだない。
  • 仕組みづくりについて3点セットでお願いしたい。土台としての子どもに関する基本法。そして、子ども庁や子どもコミッショナー。選挙前に実施した各党へのアンケートでは、各政党ともに子ども基本法には賛成という回答だったので「できる」と考えている。アンケート結果をシェアしたところ、facebookで93シェアもあり、市民の多くが関心を持っていることが分かった。子どもコミッショナーについては、規模感としてはイギリスが参考になるのではないか。予算は3.8億円のようだが、日本だとそれより大きくなるぐらいの予算規模が必要なのではと考える。
  • そもそも子どもの権利条約を知らないという人が子ども、おとなともに多い。子どもの声を聴く、そういったチャンスが与えられていないのが現状だと感じている。取り残されがちな子どもを念頭に置き、政策を考えていってもらいたい。

子どもに基本法制定に向けた提言

奥山眞紀子氏(日本子ども虐待防止学会理事長)から、日本財団の子ども基本法に関する研究会座長として、その提言内容を中心に意見が発表されました。

  • これまで子ども虐待をずっと取り扱ってきており、虐待には「子ども」という弱者と「おとな」という強者の権力構造がある。一つずつ進歩してできたこともあり、福祉は進んでいるようだが、教育はなかなかそうはなっていない。
  • 子どもに関しては条約があるにもかかわらず、基本法がない。調査機能を持つことも重要。また子どもコミッショナーが国に必要。個別救済を国でするというのは難しい。独立した権利擁護機関が都道府県に置くのが必要だと思う。調査をしっかり行い、子どもの代弁者を育むことが必要。

一場順子氏(日弁連子どもの権利委員会幹事)からは、日本弁護士連合会で策定した子どもの権利基本法案について説明いただきました。

  • 日弁連の子どもの権利委員会で10年ほど、子どもの権利法案を作る活動をし、9月17日に提言書を公開した。
  • 法案の構成としては、子どもの権利、国・公共団体の責務、基本計画の策定、子どもの背策に関する総合調整機関、子どもの権利擁護委員会などがある。
  • 子どもの権利を考える際に重要なことは、子どもは成長発達段階であること。子どもはまず遊びから学ぶので、遊びも権利に含めている。子どもらしさを守ることは大事。
  • 何が最善の利益かを考えておとなは動くべき。そのために子どもの意見表明権は重要。
  • 私自身、地方で子どもコミッショナーのようなことを経験しており、その子が何を求めているのかを聞くことを大事にしてきた。そのように実施してもらいたい。

子どもたちが考える子ども基本法や子どもに関する日本の課題についてのコメント

中島さなえ(キャンペーン実行委員団体、フリー・ザ・チルドレン・ジャパン代表)の紹介を受けて、団体およびキャンペーンでの発言者としても活動をしている波田野優さん(小学6年生)から、コメントをいただきました。

  • 子どもからおとなまで、みんなが子どもの権利について知り、毎日の生活の中に生かされていかなければならないと考える。
  • 私の学校では、教員の対応が男の子や女の子によって違うことがある。問題に対する指導も一方的な指導で行われてしまうこともある。
  • 私は日々の生活の中で「子どもだけじゃできない」「子どもなのにすごい」と言われることがある。でも「子どもは一人ひとりがちがう」ということを理解してほしい。
  • おとなも子どもも子どもの権利条約の理解を深め、子どもがおとなの意見をきける社会の仕組みも重要だと思う。
  • きちんと子どもの権利条約を学ぶことができるように、子どもに向けた働きかけ、社会に向けて働きかけを行うことが必要だと思う。私自身も日々の生活の中で子どもの権利について考える機会が少ない。悩みがあるから解決してほしいというだけでなく、子ども自身が力を養っていく必要がある。私はこれからも子どもの権利についての活動をしていきたい。

3,000人の子どもたちの声~子どもアンケート結果より~

西崎萌(キャンペーン実行委員団体、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部)から、子どもアンケートの結果について報告がありました。

  • 本アンケートは、18歳ぐらいまでの子どもを対象に行い、全国47都道府県の約3,000人から回答を得た。
  • 自分の周囲で困っているという回答の内容は、「進路・進学」「お金のこと」「勉強のこと」という順だった。「いじめ」は1.9%と少なかった。自由記述をみたところ、具体的に困っているということに「いじめ」という選択肢ではないが、いじめに関連付けられることもあると見受けられた。
  • 子ども庁・子ども基本法について子どもの意見は、半数の子どもは「期待している」を回答。「今は子どものことが後回しだけど、現状が変わるように思う」という声があった。「本気で子どものことを考えてくれるのであれば、期待したい」という声もあった。
  • 「期待していない」という回答は、「(子ども庁・子ども基本法が)できる頃には、おとなになってしまう」というものもあった。
  • 議員などと話すきっかけのない子どもたちは約6割いた。「どういう状況だと話しやすいか」という質問には、「匿名で学校内外で回答できるものは回答しやすい」という声があった。もちろん、今日のような場で発言をしたいという子どももいるが、匿名性をもって声を集めることが重要。

内閣官房こども政策推進体制検討チームからのコメント

最後に、長田浩志氏(内閣官房審議官)より、コメントをいただきました。

  • 子ども庁の発足に向けて、厚生労働省、内閣府、文部科学省からスタッフが集まって検討をしている。子ども庁をどういった組織にしていくのか、まずは方向性を示すことが大切。そのため、9月から有識者会議を立ち上げ、報告書を今週の月曜に提出された。子ども真ん中を軸足に置いている。
  • 有識者会議には、子どもに近い若者参画をしている若い方々など現場感を持った方々が有識者になった。有識者会議では若者との接点がある方々から小中高生、大学生、一時保護所にいる子どもの声も事務局としても声を聴かせてもらった。私自身も多くの気づきがあった。
  • 有識者会議の報告書では基本理念を示している。子どもの視点、親が幸せでなければ子は幸せにならないということで子育ての視点、そして、だれ一人取り残さないということ。
  • 正式な案を出すまでにはもう少し時間がかかりそう。大きな議論としては、「しっかりと司令塔機能を発揮する・ものを言っていく」「省庁からの事務移管すること」「省庁間でお見合いになっていることをすべて拾うこと」等が考えられる。

最後に、喜多明人(キャンペーン共同代表、子どもの権利条約ネットワーク代表、早稲田大学名誉教授)より、閉会挨拶がありました。

  • 子ども基本法制定の議論が、来年の通常国会に間に合えばと願っている。これまで自治体の子どもの権利条例づくりにかかわっていて、私の信念は子どもの問題で本質的な対立はないという確信を持っている。これまでかかわってきた自治体は保守も革新も全会一致で作られていった。徹底的に話し合うが民主主義の精神だと思う。そのように努力して話をしていけばできると信じている。

以上

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