開催報告:3/25「海外ルーツの子どもの今~子どもの権利の視点から考える~」

2026年3月25日(水)、本キャンペーン主催による第7回子どもの権利ランチセミナーをオンラインにて開催しました。

今回は、認定NPO法人難民支援協会代表理事の石川えりさん、認定NPO法人メタノイア代表理事の山田拓路さんから発表いただき、本キャンペーン共同代表及び認定NPO法人国際子ども権利センター(C-Rights)代表理事の甲斐田万智子さんが聞き手となってディスカッションを行いました。これまでのランチセミナーでは、最多の107人が参加されました。概要をまとめましたので、皆さんぜひご一読ください。

石川えりさん:日本における難民・外国人の状況

私は全体的なお話をして、後半は山田さんが具体的なお話をされます。

まず、人が国境を越えて移住するというのは、旅行や留学といった自発的なものから、紛争や迫害を受けて強いられる場合までさまざまな形があることを知ってください。日本の中長期在留外国人はコロナ禍でいったん減ったものの今では約400万人と、人口の4%を超えている状況です。地域を見ると、中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパールの方が多く、ミャンマーの方はここ数年で倍に増えています。基本的には在留資格を得て滞在することになりますが、日本が国策として観光を進めているので、昨年は4,000万人以上の方が来日されました。VISAの種類も、留学生、介護、特定技能、技能実習、投資経営、人文知識、国際業務技能などさまざまです。在留が長期化すると定住、永住となり、そこに家族の滞在も認められることになります。さらに帰化となり日本国籍を取得することもあります。

全体の在留を見ると、永住者や定住者およびその家族滞在が多く、うち47万人が19歳までの子どもたちです。子どもたちは、「日本で生まれる」「両親と一緒に来日する」「両親が先に来日し、後から来日する」というパターンがあり、子どもの都合で来日しているわけではありません。

日本における外国人の滞在の変遷の図

2年前くらいから政策の厳しさを感じてきていますが、2025年5月23日には「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」が出され、難民申請の迅速化と退去強制が確定した人の送還を促進することが決まりました。また、選挙を通じて外国人を排斥する風潮が強くなり、その後の政府の政策でも現状の外国人に対して在留のためにより厳しい条件を課すなど管理の強化が目立っています。

例えば、レストランを経営する場合の条件として必要な資本金が増額されたり日本語の条件が厳しくなったりということが起こっています。在留資格の申請費用も値上がりへ向けた入管法改正案が国会へ提出され、帰化や永住に関しても要件が難しくなるなど、これまで共生社会実現という流れだったものが、“秩序ある”共生社会という表現となり、現場にはさまざまに影響が出ています。外国人をめぐる規制が強化され、生活がしづらくなっている、彼らへのまなざしも厳しくなっていると言えます。

また、実際には在留資格のない方が日本で暮らしている状況があります。難民の子どもたちは、在留資格が安定せず、難民認定されないと、「親が収容されるかもしれない」という不安があり、経済的にも困窮し、結果、自分の進学も不透明で将来が描けないという問題を抱えています。在留資格がない子どもも教育を受ける権利は確保されています。また、今は在留資格がなくても、難民申請や在留特別許可申請などを通じて将来的に正規化される可能性もあります。とくに、ミャンマー、アフガニスタン、スーダンなどは、政府が緊急避難措置を取っていて、帰国を強いられることはなく、基本的には在留資格が延長されています。

【支援に関する情報】オーバーステイなどビザ(在留資格)のない子どもに出会ったら

山田拓路さん:海外ルーツの子どもの今

私は、2021年から東京都⾜⽴区を拠点として、おもに海外ルーツの⼦どもたち(3〜17歳)を対象とした⽇本語教室を行っています。

海外ルーツの子どもたちにとって言葉の壁は大きいです。来日間もない海外ルーツの子どもは日本語が分からないと、幼稚園や学校でも孤立してしまいます。なので、たとえ話をすると、いきなり日本社会の海に放り込まれたら子どもも溺れてしまうけれど、日本語教室という浮き輪があれば安心して泳ぐ練習ができて、日本社会の海を自由に泳げるようになると考えています。

言葉の壁を描いた漫画の1シーン

文部科学省の調査では、2023年には日本語の支援が必要な小・中・高校生は69,123人でしたが、この10年で約2倍になりました。彼らの進学状況を見ると、中学から高校への非進学率は日本人生徒を含む全生徒が1%だとすると、日本語指導が必要な生徒の場合は9.7%と、その格差は9.7倍です。同様に、日本語指導が必要な生徒の高校中退率は7.7倍、大学等への非進学率は2.1倍と格差があります。これは子どもの学ぶ権利が守られていない状況にあると言えます。

進学格差を表す、進学率や高校中退率のデータ(表)

埼玉県川口市の教室には、クルド人の子どもたちが来ています。クルド人は、国を持たない世界最大の少数民族で、川口市と蕨市にトルコ出身のクルド人の方が約2,000人住んでいます。難民として来日しても難民申請が認められず、非正規滞在(仮放免)になっている人が2~3割くらいかと思います。その人たちがSNS上や街中でヘイト被害を受けています。

難民認定されずに非正規滞在(仮放免)になると、住民票が発行されず、合法的に働けない、健康保険に入れないなど生活にさまざまな条件が課されます。また、基本的には居住地の県外に出ていけず移動が制限されます。また、住民票がないために、入試に合格して進学したいと思っても、大学から受け入れが難しいと言われる状況にあります。

私の教室の元生徒だった中3の子どもの話です。昨年8月に、仮放免更新の手続きに行った父親が急に入管に収監され、自宅に戻ることなくトルコに強制送還されてしまうことがありました。二ヶ月後には、母と日本生まれの子どもを含む三人の子どもも在留資格を取り消され、みんなトルコへ帰っていくことになりました。中3のお兄ちゃんは、サッカーの部活も高校進学も諦めて友達とも別れることになって泣きながら「僕の人生がむちゃくちゃに壊された」と言いました。これが政府の打ち出した「国民の安全、安心のための不法滞在者ゼロプラン」の影響です。こんな形で子どもの生活、人生を壊しているということです。

また、3~4年前までは地域で楽しく行われていたクルドの人たちの新年のお祭り“ネウロズ”に、ヘイトデモをする人たちがやってくるようになり、穏やかにお祭りを楽しむことができないという状況も起こっています。
選挙前は街中で、外国人が増えたことでの不安をあおる選挙演説が行われ、否が応でも子どもたちの耳に入る状況もあります。

最後に私たちが昨年夏に作った「子どもたちを差別から守る考え方5選」を紹介します。子どもやおとなから子どもに差別的な言動があった時に先生や身近な人ができることをあげました。マイクロアグレッションと言われるように、悪意ない差別をみんながしてしまう可能性はあるので、そういうときはお互いに指摘し合うとか日常でやれることを身につけていただいて、子どもが安心して学校で過ごせるような場作りをご一緒にできたら嬉しいなと思います。

子どもたちを差別から守る考え方5選

ディスカッション

発表の後、本キャンペーンの共同代表である甲斐田万智子さんとゲストスピーカーのお二人との対談形式で、さらにお話を伺いました。

甲斐田さん:昨年6月に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」が出されましたが、子どもの権利が保障されると謳っているこども基本法やそこで規定されている子どもの権利条約はどのように機能していると感じておられるでしょうか。

石川さん:少なくとも義務教育の確保ができていることは、「子どもの権利条約」が機能しているところかと思います。収容されないということもそうですが、でも、親が収容されることで親子分離がとても簡単に行われることがあり、そこには条約が届いていないと感じています。

山田さん:2年半ぐらい前に法務大臣が、当時在留資格がない非正規滞在者のクルドの子たちを中心に数百人の子どもたちに在留資格が付与されるということが行われました。政府にはそういうことする力があるんです。しかもその親にまで在留資格を付与することが実際行われて、それによってかなりの人生が開けました。

ただし、当時の法務大臣は「今回1回きり。日本生まれの子どもに限る。6歳以上」として、さっきお話しした0歳で来日した子どもは該当せず、強制的に追い出されてしまいました。そういう無情な線引きがあって、そこは緩やかな運用にしてほしいと思います。

スペインでは、最近でも一気に何十万人の人に在留資格を付与した事例もあったようなので、日本政府もゼロプランというなら、在留資格を付与することで在留資格のない人は日本にいない状態にするということも可能なのです。

甲斐田さん:その意味からも、「不法滞在ゼロ」ではなく「非正規滞在ゼロ」に名前を変えてほしいと思っています。国際社会でも、人権の視点から不法ではなく非正規ということばを使うことが国際的な流れになっています。

例えば二年前に、小学6年生の女の子が在留資格を失ったことで、「明日から学校に来れない」と学校の先生から言われるという事件*がありましたが、やはり「不法滞在」と言っているとネガティブなイメージがあるのでそれをやめて、子どもの権利の視点に立って、すべての子どもは同じ平等な権利があるということを伝えていくことが必要だと思いました。

クルド人女児の通学阻んだのは、さいたま市教委の「認識不足」 「除籍」誤り認め謝罪、復学へ手続き

ディスカッション中の登壇者の様子

質疑応答

最後に、甲斐田さんより参加者からの質問等を踏まえて、ゲストスピーカーのお二人との質疑応答の時間を持ちました。以下、参加者からの質問に対する回答です。

質問:高校無償化の流れの中で、外国籍の子どもたち、外国人学校の差別がかえって進む状況を危惧しています。現場での受け止めはいかがでしょうか?

山田さん:今までは朝鮮学校に通う子どもたちには、自治体から補助金が支給されているケースが多かったのですが、都内23区でも「支給をやめます」というニュースを先日耳にしたので、外国籍者で補助の要件が変わるということは危惧しています。

質問:日本では、なんみんのがいこくじんのこどもたちのために、とくべつなきょういくせいどがありますか。それとも、ふつうのこどもたちとおなじようにきょういくをうけていますか。

石川さん:難民としてもしくは補完的保護という認定が前提になりますが、日本政府による日本語教育などの定住支援を受けることができて職業訓練を受けることができます。大学にも奨学金を出して難民を受け入れるプログラムはありますが、難民認定もしくは補完的保護として認定されているものが多いです。

甲斐田さん:今日はお話していただきませんでしたが、日本の難民認定率があまりにも低いことはまた別の問題としてありますよね。

質問:子どもにいろんな権利があるけれども、ずっと長い間日本の子どもの権利が侵害されています。日本独自の自浄作用が無理なのでしょうか。外圧でしか日本は変えられないのでしょうか。

石川さん:日本の外国人政策を変えてきたものの一つは外圧というか、端的に言うとアメリカが勧告を出すことがありました。例えば、日本の人身取引の対策だったり、技能実習生への搾取を現代奴隷制度と表現したりと、アメリカの指摘は、日本の外国人政策を前に進めるための一つの大きなプレッシャーだったというふうに思っています。

ただ、今は日本の人権状況については、自分たちで良くしていく必要はあるかなと思っています。秩序ある共生政策と打ち出して、秩序というところで排除が進んでいるという側面はありますが、一方で今までなかった、社会統合プログラムの実施とか、日本語教育をもっと実施していくという方向性も出てきているので、同化政策や排除につながらないように気をつけながら議論をしていって、より多くの人が日本社会の中で包摂される方向にいくということなのかなと思っています。

甲斐田さん:外圧の一つとして、国連子どもの権利委員会の勧告があり、日本政府はもっとマイノリティの子どもの権利保障を考えてほしいと思います。委員会が差別禁止法を作ったり、キャンペーンをすべきという勧告を出しているにもかかわらず、差別がこれだけ横行しているなかで、政府がそれに応えられていないということがあり、市民もそういう勧告を自分たちのものにできていないということかと思います。

メディアの皆さんには、グローバルスタンダードに照らし合わせ、日本ができていないということを報道していただけたらと思います。来月の「子どもの権利条約」批准記念イベント院内集会※でも、そのあたりも考えていけたらと思っております。

※4/23院内集会の概要は、以下のイベントページからご覧ください。 
【子どもの権利条約 日本批准32周年記念イベント】院内集会|子どもの声からはじまる:海外ルーツの子どもの権利と日本社会

参加者の声

『1時間という短い時間の中でも、制度と実践の両側面から海外ルーツの子どものいまを知ることができました。内容が濃く、充実した時間になりました。』

『昨今の社会情勢で、具体的に支援の現場、子どもたちの現状にどのような影響が出ているのか、知ることができ、とても理解が深まりました。』

『外国ルーツの子どもたちが抱えている問題点が見えてきました。いじめがあることはわかっていましたが、初めにデータと全体的な状況を話していただき、そのあと具体的に話していただいたので、わかりやすかったです。』

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