4/22院内集会「包括的な子どもの権利保障を!~子どもとともに考える~」報告

4月22日(1994年日本政府が国連子どもの権利条約に批准した日)、広げよう!子どもの権利条約キャンペーン(以下、キャンペーン)では、包括的な子どもの権利保障を実現するための提言発表を行う院内集会(衆議院第一議員会館 多目的ホールにて)を開催しました。

当日は、国会議員・秘書47名、報道関係者10名、省庁関係者、子どもの権利に関わる専門家や組織、市民の方々約280名(会場・オンライン参加含む)に参加いただきました。終了後も、こどもの日などに合わせて、メディア掲載されました(7社、9掲載、2021年5月19日時点)。

子どもの権利に関する基本法制定や子ども庁創設の議論の動きなどもあり、また子ども虐待死事件をきっかけに親による体罰禁止が法制化され、子どもの権利保障への関心が高まっている時期に、本集会にも多くの方が関心を寄せて参加されたことがうかがえました。

本集会は、児童の養護と未来を考える議員連盟、ユニセフ議員連盟、子どもの貧困対策推進議員連盟、超党派ママパパ議員連盟からの後援、また認定特定非営利活動法人OurPlanet-TVからの協賛を頂き、開催することができました。心より感謝申し上げます。

主な発表内容

1.呼びかけ議員からの挨拶

野田聖子衆議院議員(超党派ユニセフ議員連盟会長、超党派ママパパ議員連盟会長) 
塩崎恭久衆議院議員(児童の養護と未来を考える議員連盟会長)
古屋範子衆議院議員(公明党副代表)
牧原秀樹衆議院議員(子どもの貧困対策推進議員連盟会長代行)

2.包括的な子ども権利保障のための提言の紹介と、こども庁創設に関する資料の説明

荒牧重人(キャンペーン共同代表、子どもの権利条約総合研究所代表、山梨学院大学教授)

1)提言書『今こそ「子どもに関する基本法」の制定を!~広げよう!子どもの権利条約キャンペーン提言~』について
当日配布資料:『「子ども基本法」が必要なわけ』
荒牧さん発表の様子

・日本の子どもの権利条約の実施状況に関する国連子どもの権利委員会からの総括所見などを受け、この提言を作成した。子どもからも意見を聴いて提言を作成。今後子どもとおとなが一緒に最終的な提言を作る予定(より低年齢の子どもにも分かりやすい版も参照してほしい)。
・提言の柱は以下の6つで、15項目から成り立っている。また、15項目と共に具体的にどんなことができるかを説明している。
1.子どもの権利条約を日本および世界の中で広める。
2.子どもを誰ひとりとして取り残されない。
3.子どもへの暴力をぜったいにゆるさない社会をつくる。
4.子どもの声を聴き、子どもとともに行動していく。
5.子どもの権利が守られているかどうかを確認するしくみをつくる。
6.法律や政策、条例などのつくり方を変える。
これらを実現するためにも、子どもの権利条約にもとづいて「子ども基本法」を制定することを提言する。今後も子どもと共に最終版を作っていくので、意見があれば、事務局や実行団体を通じていただきたい。

2)「こども庁」創設の議論にあたって

・子どもに関する総合的な法律の制定、独立した監視機関の設置、こども庁の設置が三位一体にならなければ、単にこども庁を創設しただけでは不十分と考える。
・国連子どもの権利条約を基盤とした総合的な法律、つまり、子どもに関する基本法が必要。
・行政から独立した立場で調査し、子どもに意見を聴いて受け止めながら、子どもに関わる政策について勧告する機関。
・こども庁は、すべての子どもを対象とし、必要な財源と人材を確保し、総合的・包括的な調整をする権限をもつ、当事者である子どもの意見を聴いて国の政策などに反映させる仕組みをもつなど。設置法についても、子どもの権利条約を基盤とすることを明記すべき。

3. 子どもたちが考える子ども基本法や日本の課題についての発言

(参考資料:子ども版提言書『知ろう、広げよう、叶えよう 子どもの権利条約』

波田野優(小学6年生)
・提言書「1.子どもの権利条約を日本および世界の中で広める。」について、3つのアクションを提案。
・①おとなに向けて:母子手帳、講座、子どもに接する人が権利条約を知る機会をつくる。子どもはおとなから大きな影響を受けるから。②子どもに向けて:教科書で学ぶ。生徒手帳に載せて身近に感じること。自分の権利を知り、「自分にもできるんだ」と思えると生活しやすくなる、虐待など受けた時に声をあげられる。③社会に向けて:子どもの日、虐待防止月間などでテレビやSNSで紹介するなど。
・「子どもなのにすごいね」「子どもだからできないよ」という声が少なくなり、子どもの尊厳が守られる社会になってほしい。

檜垣恵麻(高校3年生)
・提言書「2.子どもを誰ひとりとして取り残されない。」について。経済的な理由で、塾に通えない、親が遅くまで働いていて家で一人で過ごしている、友達とも外で遊べないなどの子どもがいる。他にも、生きづらさを感じている子どもが多くいる。
・そのような子どもたちは、その原因を「自分のせいだ」と考えてしまう。お金や親の事は子どもの力ではどうにもすることができない。子どもにその生きづらさは「自分のせいではない」「自分は守られている」というメッセージを伝えることが必要。そのために、子どもをそばで支えるおとなの存在は必要不可欠。
・今のままでは、誰も助けてくれるおとながいないまま、子どもはおとなになり、自己嫌悪に陥る、負のサイクルが続いてしまう。子どもたち全員の権利が守られる社会をめざそう。

関志翔(高校3年生)
・提言書「3.子どもへの暴力をぜったいにゆるさない社会をつくる。」について、里親制度の見直しを提案したい。
・乳児院で育ち、いま3つ目の里親家庭でくらしている友達がいるが、里親から差別や虐待的な扱いを受けてきた。今も苦しんでいる。政府は、里親委託を増やそうとしているが、里親家庭で暮らす子どもは必ずしも幸せに生活できているとは限らない。子どもへの暴力は絶対に許してはいけない。
・提案として、保育士などの資格を持つ人が優先的に里親になる、里親研修に子どもの権利を基盤とした子育ての仕方を盛り込む、専門職員による里子への1対1のカウンセリングの実施の徹底を通して、子どもにとって最善の利益を考えた政策・しくみを作ってほしい。

坂口くり果(中学3年生)
・提言書「4.子どもの声を聴き、子どもとともに行動していく。 」について。子どもの参加する権利が最初に守られる柱だと考える。子どもの参加する権利のことを伝えると、「子どもはわがままになる」と考える人がおり、子どもの意見を聴こうとしなくなってしまう。しかし子どもが参加する権利を知ることで自分の頭で考えて意見を発することができるようになる。
・私たち子どもにも話し合いの場に参加させてほしい。賛成かどうか聞くだけではなく、同じテーブルで、話す一人として意見を言わせてほしい。

坂本瞳(高校3年生)
・提言書「5.子どもの権利が守られているかどうかを確認するしくみをつくる。」について2つ提案。
・①子どもの権利が守られているか、独立した監視・救済のための公的機関をつくること。いじめホットラインなどだけではなく、子ども全般のことについて調査し、子どもの意見も聴きながら解決のための対応を行うべき。
・②教育の場に、子どもの権利に詳しい第3者を置くこと。スクールカウンセラーだけでは不十分なため、学校から影響を受けない立場の人権擁護専門家を設置する。子どもの相談には、子どものプライバシーを守りながら対応してほしい。秘密を守ってくれないと相談できなくなる。

子ども登壇者の発言の様子

4.大谷美紀子(国連子ども権利委員会委員)からのコメント

大谷さんコメントの様子

・2019年国連子どもの権利委員会の審査で出された勧告をどう実現するか、問題となっており今からが勝負。
・日本の最も課題となっているのは、子ども参加、権利条約の一般原則の一つ。この院内集会で子どもが参加しているように、子どもが議論に参加することで子どもは社会の一員であることを示していく、子ども自身もエンパワーされ力を発揮していく。
・日本では個別の課題が多く取り組まれているが、総合的な課題に取り組むことも個別的な課題解決につながるので、取り組んでほしい。
・国連子ども権利委員会で勧告されている総合的な課題には大きく3つ。①総合的な法律の制定、②子どもに関する活動を調整する機関の設置(こども庁に当たる)、③子どもの権利をモニターする独立機関の設置(コミッショナーや子どもオンブズマンなどと言われる)。これらをセットで実現するべき。子どもたちの声を聴きながら、大きなうねりを作っていきたい、一緒に頑張りましょう。

5. 関係省庁からのコメント

外務省
・2019年の児童の権利条約批准30周年にあたっては、児童の権利委員会の求めに応じて、日本政府から児童の権利条約にコミットするためのプレッジ(誓約)を出した。児童の権利条約を誠実に遵守すべく、児童の権利条約や児童の権利委員会の総括所見などの内容について、関係府省庁と共有し、緊密な連携を進めている。
・日本は、子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ(GPeVAC)に参加しており、現在、子どもに対する暴力撲滅行動計画の策定を進めている。また、子どもに対する暴力撲滅基金に1.5億円を拠出、新型コロナウイルス感染症により深刻な社会経済的影響を受けているウガンダ、ケニアなどのアフリカのサブサハラ諸国で、暴力によらない子育ての支援を実施。
・子どもの声を聴くという点に関しては、子どもに対する暴力撲滅行動計画の策定過程において、日本ユニセフ協会とヤフー株式会社の協力を得て、子どもパブコメを実施。子どもが自らの意見を表明する権利は、児童の権利条約第12条にも定められており、重要な視点であると承知。

法務省
・子どもへの暴力について、2019年6月、法制審議会に対し、民法上の懲戒権の見直しについて諮問し、現在その検討を行っている。暴言等の精神的苦痛を与える行為を禁止する規定を設けることの要否等についても検討している。
・養育費の支払確保や安全・安心な面会交流についても指摘がある。これまでも民法の改正、民事執行法の改正を行っており、例えば、2011年の民法改正では、離婚時に協議で定めるべき事項の具体例として、面会交流及び監護費用の分担が明示された。さらに,本年2月には,離婚及びこれに関連する制度に関する見直しについて、法務大臣が法制審議会に諮問をし、養育費や面会交流についても検討している。
・子どもの人権110番の設置、子どもの人権SOSミニレターの全国の小中学校への配布など子どもが相談しやすいよう様々な手段を用意している。

文部科学省
・いじめ対策では、2013年いじめ対策推進法が成立されてから、いじめの認知件数伸びている。小さないじめでも見逃さないよう、学校が動き出したと認識。まだ苦しんでいる子どもたちに対策必要。
・体罰禁止は、学校教育法11条で禁止されているが、まだ体罰が起きており、学校関係者への研修実施を継続する。
・学校が子どもへの虐待の早期発見を図るよう、研修等を実施。学校が子どもを守れる場であるという認識が重要。

厚生労働省
・令和元年度の児童相談所の虐待相談対応件数は過去最多の19万件、一貫して増加。死亡事例、痛ましい事案も。
・児童虐待防止対策において、児童虐待の発生予防・早期発見(体罰禁止規定の創設、相談窓口の周知・啓発等)、児童虐待発生時の迅速・的確な対応(児童相談所の体制強化等)、被虐待児童への自立支援(家庭への復帰支援、家庭養育の推進等)などに取り組んでいる。

6. リレートーク「子どもの権利を守るために~各団体の取り組み」

1)子どもへの暴力(虐待)の視点から:長谷有美子(NPO法人CAPセンター・JAPAN事務局長)

・学校・家庭・地域等様々な場所で、子どもへのあらゆる暴力が発生しているが、子どもの抱えさせられている課題には個別の法律が対応している現状。
・CAP(Child Assault Prevention)プログラムは、子どもをあらゆる暴力から守るための子どもの権利をベースにした予防教育。自らの権利を知ることは、自分を守り、他者を守る力になる。また子どものケア、権利回復にも重要な役割を果たすものだということを出会った子どもたちが教えてくれた。
・身近なおとなが、子どもを権利主体として意識することが重要。おとなに不信感を抱く経験を多くしている子どもは、「しかたない」とあきらめの気持ちを持つことになる。これをストップさせるのが、子どもの権利を知ること。子どもの権利を基盤とする一貫した予防的な観点による対策を求める。

2)子どもの貧困の視点から:田代光恵(公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部子どもの貧困問題解決事業プログラム・マネージャー)

・資料:3万人アンケートから見る 子どもの権利に関する意識 調査結果報告3万人アンケートから見る 子どもの貧困に関する意識 調査結果報告
・2019年に約3万人の子どもとおとなを対象にしたアンケートを実施、その結果では、日本における子どもの貧困の実態を「聞いたことがない」と答えた人は子どももおとなも約3割、また子どもの権利条約について「聞いたことがない」と答えたのは、子ども約3割、おとなは約4割もいた。まだ子どもの権利が知られていない現状。
・子どもの権利条約を内容までよく知っている人の「日本における子どもの貧困の実態を内容までよく知っている」と回答した率は高く、子どももおとなも約半数。子どもの権利条約の認知度と、子どもの貧困の認知度に強い関連性があることが分かった。子どもの権利を知ることが、子どもにとってのより良い生活水準を考えることにつながる。また平時から包括的な子どもの権利保障の仕組みを作ることで、コロナ禍で子どもの貧困問題が深刻化している状況など緊急時にも迅速な子ども施策を行うことができる。子どもの貧困問題のより良い解決のためにも包括的な子どもの権利保障を求めたい。

3)日本財団「子ども基本法」提言:高橋恵里子(公益財団法人 日本財団 公共事業部国内事業開発チームリーダー)

・資料:日本財団「子ども基本法」提言書
・子ども基本法の制定を目指す取組みをしている。障害者の権利、女性の権利は、国際条約に批准する際に国内法が整備された。現在は障害者基本法、男女共同参画社会基本法が制定されているが、子どもの権利については、条約に批准しても子どもの権利を保障する基本法が存在していない。
・提言書には、基本法の条項案がある。まず①子どもの権利条約の一般原則を明記する。②子どもの権利保障のための総合調整機能をもつ「子ども総合政策本部(仮称)」を設置する、これが、子ども庁に相当するかと考えており、その役割を担っていただきたい。③子どもコミッショナー(仮称)についても明記しており、是非設置いただきたい。

4)子どもの権利実現の展望、まとめ:甲斐田万智子(キャンペーン共同代表、認定NPO国際子ども権利センター(シーライツ)代表、文京学院大学教授)

・子どもの権利アプローチは、国連子どもの権利委員会から、度々足りないと指摘されている。なぜ必要かというと、権利保有者である子どもをエンパワーすることによって、つまり子どもが権利を知ることによって主張していいんだと思えるようになること、また責務履行者であるおとなの能力を強化することによって、おとなが主張を受け止めて子どもの権利を実現できるように力をつけることだからです。
・子どもの貧困、虐待、体罰、いじめなど様々な問題を解決していく際に、子ども自身が声をあげられていないことに気づけるように、おとなの子どもの権利の認識を深める必要がある。
・日本では一般的な子どもが声を上げにくい社会だが、差別や暴力を受けていたり、マイノリティの子どもなど、しんどい思いをしている子どもはもっと声を上げられない。子どもたちが運が悪かった、自己責任だと考えたり、諦めたりして孤立するのではなく、あたりまえの権利を主張し、その声が受け止められる社会に。そのために子どもの権利に基づいた取り組み・制度と、意識を変えることが必要。そのための子ども基本法が必要。多くの人に関わってもらって、結果を出していきましょう。

7. 質疑応答

Q1.
・子どもの課題に関する各種データが20年前から悪化している。なぜだと思われるか。日本のNPOが停滞しているのではないか。(報道関係者)
A1. 
・日本のNPOは、確実に子どもの権利の推進に取り組んできている。停滞しているとは思っていない。(荒牧)
・市民団体には限界があり、リーチできる子どもにも限りがある。だからこそ公的な制度が必要。(甲斐田)
・児童虐待、いじめのデータが増加しているのは、社会が認知するようになってきたと言える。(高橋)
・子ども権利委員会からも指摘されているように、資源配分を増やし子どもへの取り組みを強化する、公助をどうするかを考える必要がある。(田代)

Q2.
・子ども貧困、虐待は、構造的問題。特にひとり親家庭は半分くらいが貧困。離婚率が増えている、離婚後の共同親権の制度が日本だけなく、単独親権制度がずっと残っている。世界中で日本のみ。家族制度をどう考えているか?(嘉田ゆきこ参議院議員)
A2.
・団体として、アンケートから子ども達の声を紹介したい。「子ども自身に政策が届いていく」「生きる、育つ、守られるの権利を保障するためにきちんと税金を使ってほしい」との声。きちんと子どもに届くのかを第一に考え取り組むべき。(田代)
・子どもにとって親は親。離婚をしても親の責任(Parental Responsibility)はどちらにもあり、そういった形に日本もなればよい。(高橋)
・親権は親の権利ではなく、海外では親の責任という考え方。日本もそのように考え方が変わっていくとよい。(甲斐田)

以上