子どもの権利条約フォーラム2023 in とよた開催報告

2023年11月25日(土)~26日(日)の2日間、愛知県豊田市にて、 子どもの権利条約フォーラム2023 inとよた(同フォーラム実行委員会主催)が開催されました。
「子どもの権利条約フォーラム」は、子どもの権利条約の普及および関心を寄せる人々の学びや交流の場として、1993年から毎年、全国各地で開催されています。今年は31回目の開催となりました。

豊田市少年少女合唱団の合唱からはじまった1日目は、喜多明人さん(子どもの権利条約ネットワーク代表、早稲田大学名誉教授、広げよう!子どもの権利条約キャンペーン共同代表)より、これまでに全国各地で開催された「子どもの権利条約フォーラム」の歴史や、そこでの議論や学びについて紹介がありました。
基調講演では、大谷美紀子さん(国連子どもの権利委員会前委員長/弁護士)から主に人権教育についてのお話がありました。子どもの権利条約29条に、子どもへの教育は「人権の尊重を育成すること」と書かれていることや、子どもの権利を守る義務を負っているのは国であるということ、まずはおとなが権利を知り、実践していくことが大事であるといったことが話されました。

基調講演の後は、各地域の子どもたちから活動について発表があり、パネルディスカッションでは子どもたちが学校や日々の生活の中で感じる疑問や想いなど、おとなにききたいこと、きいてほしいことについて大谷さんも交えて意見を交わしました。
司会を子どもたちが務め、たくさんの子どもたちが参加し、とても温かな雰囲気に包まれた全体会でした。
二日目は37の分科会のほか、大道芸やプレーパークなど、子どもたちが楽しめる企画もたくさん開催され、大人と子どもで溢れたとてもにぎやかな会場となりました。

「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」では、フォーラムの広報や、実行委員会組織や賛同団体による分科会への参加などを行ったほか、クロージングにて来年の東京開催について発表しました。

分科会#34「もっと知ろう!もっと広めよう!こども基本法~こども基本法と子どもの権利を子どもに関わる活動の軸とするために~」

4月に施行されたこども基本法をテーマとして、会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された本分科会には、学生や子どもに関わる活動をされている方、教員、行政関係者など約40名の方にご参加いただきました。

講演「こども基本法について」

最初に西崎萌さん(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)からこども基本法について説明がなされ、なぜこども基本法が必要だったのか、こども基本法ができたことで新たに進められていることはなにか、家庭や学校、子どもの遊び場・児童館などの地域の子どもの居場所などで活かせることはなにかなど制度から取り組みまで広く話がありました。

講演前に会場で挙手してもらったところ、参加者のほとんどがこども基本法について知っていました。しかし、自分の周りでこども基本法について話したことがあるかと質問をすると、その数は減ります。知っている人は増えてきているけれど、みんなで話しをすることはまだまだ難しい現状がある中、参加者が身近な方と話しをする土台となるお話を西崎さんからしていただきました。

事例発表「子どもの権利を活かした現場での子どもとの関わりや、子どもの権利を尊重しながら子どもと一緒に行う活動について」

川崎市の取組について

圓谷雪絵さん(かわさき子どもの権利フォーラム事務局)から、川崎市ではどのように子どもの声を聴いているのか、誰でも利用ができるこども文化センターや川崎市子ども夢パーク、川崎市長へ直接提言ができる川崎こども会議などの事例を紹介を交えてお話がありました。

川崎市では、有識者や専門家だけでなく子どもとともに子どもの権利条例が作られたことから、当初から子どもの意見が聴かれる土台があったといいます。子どもの意見がきちんと条例に反映されたことによって、子どもたち自身が「意見をいっていいんだ」と自信を持ち、「自分の意見が反映される」という経験をしてきたことはとても大切なプロセスであったことが共有されました。そして条例作りのような大きな取り組みだけでなく、「今日履く靴下を自分で選ぶ」「食べたいものを自分で決める」といった家庭や学校、地域など子どもが暮らす身近な場所での声の反映を積み重ねていくことが大切ではないかというメッセージが参加者へ届けられました。

圓谷雪絵さんプロフィール:
 かわさき子どもの権利フォーラム事務局、子どもの権利条約ネットワーク事務局、川崎市役所こども未来局青少年支援室子どもの権利担当専門調査員、元子ども委員(川崎市子ども権利条例の策定に関わる)、川崎市子ども会議元サポーター

名古屋市「なごもっか」の取組について

間宮静香さん(名古屋市子どもの権利擁護委員)から、子どもの権利救済機関である名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」の取り組みを通して、どのように子どもたちの声を聴いているのかお話がありました。

子どもの権利を守る文化と社会をつくり、子どもの最善の利益を確保することを目的としたなごもっかでは、子どもたちの相談(個別救済)だけでなく、子どもの権利に関する普及啓発にも取り組んでいることや、子どもの意見表明権や子どもの最善の利益を重視しながら一つひとつの相談について検討・解決するまでのプロセスを丁寧に共有していただきました。

また、相談から見えてきた課題を活動報告書等を通して広く社会に伝えていく取り組みや子どもたちが参画したなごもっかの運営などについても話されました。「子どもに」ではなく「子どもと何ができるか」を常に考えながら活動しているといったメッセージが印象的でした。

間宮静香さんプロフィール:
弁護士(愛知県弁護士会)、日本弁護士連合会子どもの権利委員会副委員長、名古屋市子どもの権利擁護委員(前代表委員)、瀬戸市子どもの権利擁護委員代表擁護委員、前豊田市子どもの権利擁護委員

お二人の事例発表の後、参加者同士が感想や質問などを共有するグループワーク、登壇者の皆さんと意見を交わす時間が持たれました。

子ども会議のつくり方や条例の必要性、相談内容や広報についてなど具体的な質問をはじめ、たくさんの質問や感想が積極的に出されました。

登壇者からのひとこと

圓谷さん
子どもとおとなを分けるのではなく、基本的人権を持つ同じ人間として大切にし合うことが大切だと思っています。当たり前のことだけど、忘れがちな基本的なことを改めて振り返ることも大切だと思います。

甲斐田さん
子どもは表面的には見えなくてもきちんと意見を持ち、言う力があると信じることが大切だと思っています。

西崎さん
おとなから、子どもの声を聴いてもそれを実現できない理由ばかりを並べられると本当に聴く気があるのかと思ってしまうといった子どもの声がありました。子どもの声を聴いて(実現できなくても)フィードバックすれば良いという風潮になってしまっている部分に難しさを感じていますが、一つひとつ壁を乗り越えながら、子どもの意見表明や子どもの意見を聴くということが当たり前の社会になることを願っています。

間宮さん
おとなの犠牲の上に子どもの権利があるのではなく、子どもの権利を保障するためにもおとな自身が過ごしやすい社会にしていくことも必要です。おとなも子どもも含めて幸せになれることが子どもの権利だと思っています。

小澤さん
子ども自身が権利を使える一人の人であること、その力を持っていると信じることと同時に、安全に暮らせる、明日もここにいて大丈夫と思えるように守られる存在であるということを大切にしながら、子どもの権利の体験を日常で作っていけたらと思っています。

参加者から寄せられた感想

小さい子には、どっちがいい?何が食べたい?と選んでもらうところから始めるといいという話から、小さなことから始めようと思いました。
・子どもたちの意見をきくこと、そこを大切にこどもをまんなかにおいて日々をすごし、一緒に成長していきたいと思いました。
・全国の自治体で子どもの権利条約制定や救済機関の設置を働きかける活動で参考とさせて頂きます。

地域で活動している子どもやおとな、自治体の方など多様な参加者が集まった分科会でしたが、子どもの権利を大切にすると同時に、大人自身が自分の権利を知り、大切にすることの必要性をみんなで確認できた分科会になりました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

※分科会#34開催メンバーは、以下となります(組織名、五十音字順)
杉山、成田(ACE)、甲斐田(C-Rights)、高橋(KNC)、小澤、矢部(PIECES)、西崎、山内(SCJ)、菅原(FTCJ)、高橋(WVJ)

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