2022年1月19日(水)に、広げよう!子どもの権利条約キャンペーン(以下、キャンペーン)では、子どもの意見を聴きながら「子どもの権利の大切さ」について理解を深め、「子どもの権利の実現」のためにできることを考えるために、「子どもたちと語る いま、子どもの権利をひろげるために大切な4つのこと」というトークイベントを開催しました。
当日は、スペシャルゲストとして、本キャンペーンアドバイザーであり教育評論家の尾木ママ(尾木直樹氏)をお迎えし、子どもの権利を社会で実現するためにどのようなことができるかを共に考えました。またYouTubeでは207名の方にご視聴いただき、コロナ禍の学校での経験や、子どもとおとなが一緒に活動していることなど、さまざまなお話を聴くことができました。
今回トークに参加いただいた子ども・若者15名(うち会場7名、オンライン8名、小学1年生から大学1年生)は、以下の3つの団体・機関を通して参加してくれました。
- 認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
- 子どもの権利条約フォーラム2021inかわさき 子どもグループ
- 名古屋市児童館 留守家庭児童クラブ「きらきらくらぶ」
1.広げよう!子どもの権利条約キャンペーンについて
はじめに、嶋村仁志(キャンペーン実行団体、子どもの遊ぶ権利のための国際協会(IPA)代表)から、開会挨拶およびキャンペーンの紹介をしました。また、キャンペーンが1月31日まで募集しているクラウドファンディングの呼びかけも行いました。
2.パネルトーク
次に、モデレーターの岩附由香(キャンペーン実行委員組織 認定NPO法人ACE代表)から「子どもの権利をひろげるために、大切な4つのこと」(A 子どもの権利条約を日本中にひろめる、B 子どもの声を聴き、子どもとともに行動する、C 誰ひとり、子どもを取り残さない 、D 子どもに対する暴力を、ぜったいにゆるさない)を考える問いかけをし、子どもたち、尾木直樹氏、林大介(キャンペーン実行委員会組織 子ども権利条約ネットワーク事務局長)がパネルトークをしました。
〜子どもの権利があるって、いつごろ・どんなふうに知りましたか?どんなふうに思いましたか?〜
<子ども>
・川崎市の「子どもの権利条約フォーラム」で知った。権利って社会の授業でなんとなく知っていたけれど、子どものための権利があるのはそこで初めて知った。これはどうやって作られたのか、また、守られる仕組みが気になった。
・小学校の読書感想文を書く時、海外の女性の教育の権利についての本を読んで、そこから日本の子どもの権利にも関心を持った。深く知ったのは高校になってイベントに参加するようになってから。
・小学校3年生くらいの時、本屋で「子どもの権利条約」というパンフレットを見つけて衝撃を受けた。その後、フリー・ザ・チルドレンの活動に関わって深く知っていった。
・小学1年生の時に、図書室で子どもの権利条約の本を見つけて、それ以来、本を見つけると調べるようになった。
<岩附>
知ったのが学校ではない、というのがポイントかもしれませんね。
<尾木ママ>
・(話を聞いて)やっぱりか、申し訳ないな、という気持ちでいっぱい。なぜかというと、国連子どもの権利条約42条に(子どもの権利についての)「条約の広報」というのが書いてある。子どもたちは、子ども権利条約について教えられない限り、知ることができない。国は「子どもの権利条約を広く知らせる」という義務があるが、日本では25年間きちんと発信されてきていなかった。形だけでパンフレットを配るなどしている。「心配しなくていいですよ、日本の子どもの権利は守られています。中学校には生徒会、小学校には児童会があるから」という人がいて、びっくりした。文科省以外の省では「子どもの権利」が引用されているが、一番大事な文科省がやってくれない。おとなを代表してお詫びします。
<岩附>
・2019年のセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの調査では、「子どもの権利条約について聞いたことがない」と答えたのは、子どもが3割、おとなが4割。権利を守る側のおとなが知らなければ、守れない。子ども自身が知っていることも大事だし、おとなが知っていることも大事。
<尾木ママ>
・日本では「子どもの権利」というと「権利があるというなら、義務も果たせ」というおとながいて、学校でもそう言う人がいる。理論的に心の問題でいうと、権利を与えられていない人には、義務感は生まれてこない。自己決定をする中で責任感が出てくる。権利を行使しない限り、義務感は出てこない。
<子ども>
・そういえば、中3から始まった公民の授業で、「権利を学ぶと主張してくる子がいるかもしれないけど、権利は義務を果たさないと守られないからね。」と言われた。
<林>
・学校の先生になる人のための教職課程で教えている。教職になる人が子どもの権利を学んでいるかが非常に重要だと思うが、子どもの権利条約を学ぶ授業が必須になっていない。なので私の授業では必ず子どもの権利の内容を入れている。子どもに教える側が、言葉だけではなく中身について理解していないのは問題。
・川崎市は「子ども権利条例」が先駆けてでき、教育委員会が研修を行っているので、他の自治体と比べて子どもの権利について理解がある先生が多いと思う。いま自治体では「子ども条例」づくりが進んでおり、50以上ある(http://npocrc.org/wp-content/uploads/2021/10/jorei2110.pdf )ので、そのような意識のある自治体は、子どもの権利についての教育を行っているが、そうではない自治体が多いのが現実。
<岩附>
・権利はみんなのものなのに自治体で差が出てしまうのは、どうなのかなあ、と思う。
・これまで子ども自身が「知識だけじゃなく、子どもたち自身に実現できるように伝わるように教えてほしい。」「子どもに直接かかわる人たちには、継続的に定期的に研修をして、子どもの権利を尊重したプログラム運営をしてほしい」といった声があった。政策提言書にもそのことを掲載している。
〜どんなときに子どもの権利が守られていないと感じましたか?自分の意見を聴いてもらえた、という経験は?聴いてもらえなくて残念だったな、という経験はありましたか?〜
<子ども>
・小学校の時に納得いかないことについて、先生にと伝えたら、「子どものくせに生意気」「おとなが決めたことを守りなさい」と言われた。そう言われると、子ども側も「従うしかない」という雰囲気が浸透してしまう。(子どもの権利が)守られていないと思った。
・デートDVに関して勉強する中で、日本と海外で守られている程度の差を感じた。アメリカには子どもを守るための法律が定められていて、日本国内ではあまりなかったり、子ども自身にも自分に起こりえるような権利侵害についてあまり知られていないなと感じた。
・コロナ禍で中学校が休校になり、学校が開始しても部活動だけは休止のままだった。部活動のために学校に行くらいのモチベーションだったのに、休止になってしまって、どう整理したらよいか分からなかった。子どもの権利を知らなかった時はそういうのが当たり前だと思っていた。だけど知るようになってから、勝手に決めるのではなく、自分に関わることだから私たちの意見も聞いてほしかった。結果が同じであったとしても、自分の意見が言えたとしたら、それが心の支えになったかもしれなかったから。子どもの生きがいになっているような部活動は、オンラインでもやってほしかった。
・小学4年生の時学校がコロナで休校になった。再開してから、川崎市多摩区の子ども会議に行って、「学校が休校になってどう思いましたか」というアンケートがあった。その回答のほぼ全体が「学校が休校になって悲しかった」だったので、他の策をとってほしかった。「時間や日にちを分けて登校するなどしてほしかった」という意見が多かった。おとなが決めたからじゃなくて、もっと子どもの声を聞いてほしかったなと思った。
・悩みを抱えている友達が、先生から「苦しかったら相談室に来てもよいよ」と言われたので話に行ったのに、「(その内容では)相談するのはまだ早い」と返されてしまって泣きながら帰ってきた。心の強さは人によって違うので、その子ども個人への対応はもっときちんとやってほしかった。
<尾木ママ>
・(これまでの話の中で)休校の時に色々感じたことが分かった、一方的に決められたり、オンラインでもできたのに、など。判断自体は感染の観点から言えば正しかったかもしれないが。例えば、コロナ禍の運動会について、政府の指針に従ってやらなければならなかった。その時に子どもに意見を聴いた学校は、距離を取れるように2mのバトンを作ってリレーをしたとか、一人1個ずつで玉入れをしたとかきいた。子どもたちに聴くとどんどん案が出てきて、相談した先生たちは子どもたちの力に驚いていた。
・子どもが主役であり中心なので、意見を聴かないと。意見を聴くというよりも相談してしまえばよい、頼ってしまえば。文化祭などVRで実施した学校もある。新しいきずなも生まれる。先生たちだけで頑張らないということだと思う。一方的に決めないことが大事。
<子ども>
・確かに、おとなと子どもが一緒に考えるってとても大切だと思っている。おとなだけの会議、子どもだけの会議で分けてる会議じゃなく。私は地域の子ども会議で活動していて、例えば子どもの意見でオンラインショップができた。「おとなだけではできないアイデアができて『ありがとう』」言われたことがあり、それがすごくうれしかった。
〜みんなの周りで権利を守るためのどんな取り組みがありますか?地域や学校で、子どもが参加する仕組みが身近にありますか?〜
<子ども>
・高1の学校の総合の授業で、デートDVやハラスメントについて先生が劇を通して教えてくれた。こういうことはいけないし、された時はどうしたらよいかも教えてもらえた。
・中学生の時に、「子どもの権利」とは言っていなかったけど、「心の交流プログラム」というのが年に数回あって、何か困ったことが起きたときには相談していいよ、意見を表明してよいよ、と教えてもらった。
・(児童館にある)きらきらクラブでは、みんなで集まってカードを見て話し合ったり、子どもの権利条約について書いてある紙を見ながら疑問に思ったことを話したり絵にかいたりして学んだ。
・川崎市のミニカワサキというプログラムは、子どもの、子どもによる、子どものためのまちづくり。コロナになってZoomで話し合って、YouTubeチャンネルを作ったり、小さいミニカワサキをたくさんやろうといろいろなイベントに参加したり。新聞も作って記事を書いたり、ラジオの生放送にもでたりした。町をつくる活動だけど、それ以外のことにも挑戦できる。おとなと子どもの境目を作らず話し合いながら、まちづくりをしている、私の大好きな活動。
・多摩区子ども会議では、グループに分かれて各議題について話し合って、意見を出し合って発表する。川崎市子どもの権利条約フォーラムでは、団体に所属している子どもたちが集まって、子どもの権利とはどんなものなのかを知っていく会議。今回皆さんにも子どもの権利について知ってもらいたい。
・アジアの女子と一緒に、女子に関する社会問題を解決するための有志団体を立ち上げた。アプリを開発する壮大な目標があったが、そこでは自分で調べるしかなかった。おとなと子どもが連携して支えあえる仕組みがもっとあると良いなと思った。
<岩附>
・日本の中では、参加する仕組みがないことがほとんど。子どもが社会に参加する機会をどう作っていけるでしょか?
<尾木ママ>
・子どもの参加する権利は、子ども権利条約の中で、一番大事だと思う。これからは「子どもとおとなが対等なパートナーシップで生きあう」という視点が大切。
・人類史上で、性別、肌の色、宗教など様々な差別があり、いまでは女性やLGBTへの差別は許されない、との認識になり、人類は少しずつ前進している。ところが最後に残っている高い壁が、「子どもとおとなのパートナーシップ」。小さくて頼りない子どもと、どうして対等なんだろう、という疑問の声がある。この最後の大きな壁に、たくましくぶつかっているみなさんの実践を聞いて嬉しかった。だから挑戦的に頑張りましょう。みなさんがいろんなところで頑張っているのを聞いて嬉しい、希望ですね。
<林>
・50以上の自治体で子ども条例があり、子どもの意見を聞く子ども会議を定めている自治体も多い。 「子どもはこう思っているに違いない」とおとなが決めつけてしまう前に、子どもが身近なことからでも意見を表明できることが大事。
3.感想・気づきの共有
パネルトークを終えて、登壇者のみんなで今日印象に残った言葉や、子どもの権利を大事にするために大切だと思うことを共有しました。
- おとなと子どもが対等に主張できる関係(こはる)
- 自分の意思を尊重する(ゆりこ)
- 子どもとおとなのパートナーシップ(Risa、なの)
- 希望のあるパートナーシップ。いろんな活躍を聞いて勇気をもらった(山内彩)
- 子ども自身が子どもの権利をまず知ること(ゆりな)
- 子どもの子どもによる子どものためのまちづくり(坂本菜々美)
- 子どもとおとなのパートナーシップ、人類が残した壁。子ども文化センターでいろんなことができるように増やしてほしい。(ももちゃん)
- おとなと子どもが平等で楽しめる世界(ゆうこさん)
- 子どもとおとなのパートナーシップ(尾木ママ)
- 権利が与えられていないと義務感を感じることができない(林)
- 最後の壁(岩附)
4.コメント・キャンペーン提言書の紹介
最後に、甲斐田万智子(キャンペーン共同代表、認定NPO国際子ども権利センター(シーライツ)代表、文京学院大学教授)からパネルトークのコメントとキャンペーン提言書の紹介があり、改めて以下の「新しい仕組みづくり」「4つの大事なこと」を実現するために国・政府レベルでの変革を訴えました。
以上