【報告】3月25日子どもメガホンプロジェクト活動報告会~全国子どもアンケート結果報告と私たちの提言~
3月25日(月)に、広げよう!子どもの権利条約キャンペーン(以下、キャンペーン)では、「子どもメガホンプロジェクト活動報告会~全国子どもアンケート結果報告と私たちの提言~」をオンラインで開催しました。当日は、小学5年生から高校3年生までのメガホンプロジェクトの子どもメンバー8人、一般参加者約40名、こども家庭庁長官官房の佐藤勇輔参事官、報道関係者3名、キャンペーン関係者9名が参加しました。
今回の報告会は、2023年9月~10月に実施した「全国子どもアンケート『みんなの今を教えて~子どもの権利、知ってる?~』」(以下、アンケート)の結果(回答数子ども1,410人)から子どもメンバーが気づいたこと、それらをもとに、子どもの権利が保障される社会を実現するために、政府や社会全体で取り組んでほしいことを広く知らせることを目的として、実施されました。
冒頭に司会の山下愛子(特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 支援事業第2部 国内支援・アドボカシー課 プログラム・コーディネーター)から開会の挨拶があった後、高橋美和子(関西NGO協議会アドバイザー)から、本報告会の子どものセーフガーディングの約束についての説明がありました。その後、武田望(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部国内政策提言チームオフィサー)から、キャンペーンとメガホンプロジェクトについて、説明を行いました。そして、報告会に参加した8人の子どもメンバーから、名前と一言の自己紹介を行いました。
今回のアンケートでは、子どもメンバー自身がアンケートの質問を考え、結果の分析まで行いました。まず、子どもメンバーが日本における子どもの権利の課題について学び、アンケートで子どもたちに聞きたいテーマを「子どもの意見表明」「学校生活」「教育格差」「子どもの心と体の健康」の4つに絞り込みました。そして、グループに分かれ、それぞれのテーマについて4問の質問を考えアンケートを行い、結果を分析し、発表資料を作成しました。アンケートの質問や結果概要につきましては、こちらをご覧ください。
報告会では、子どもメンバーがアンケートの結果と気づいたこと、そして、それらをもとに、子どもの権利が保障される社会を実現するため、子どもたちが政府や社会全体で取り組んでほしいことについて、テーマごとに、以下のような内容を発表しました(発表内容から要約)。発表の後、各グループの発表内容について質疑応答の時間があり、一般参加者からの質問に、子どもメンバーが回答しました。
「学校生活」について
アンケート結果
- 学校で少しでも心配だ、安心できないと感じることについて、友達・先生との関係性などの人間生活に関わるところ、また、身だしなみや生活に関する学校のルールなど、校則に関わることが多かった。
- 学校生活の中で変わってほしいところを見つけた時、学校に伝えるかという質問について、約80%の人が、「伝えない」と答えた。またその理由として、「話を受け止めてもらえない、あしらわれると思う」や「先生に面倒だと思われ、態度を変えられそう」と答えた子どもが6~7人に1人いた。「どうでもいい」「別の人が伝えそう」という当事者意識の欠けた回答もあった。
提言
- 生徒と先生に子どもの権利を教えてほしい。小中学生などの早期から子どもの権利に触れること、教科書で分かりやすく、詳しく学習することが大切。また、教科書などで身についた知識を実際に使い、自分で表現できるまで子どもの権利を学習するため、道徳や総合の授業で実践する必要もある。先生についても、子どもの権利を教員採用試験に組み込んだり、専門家やNPOに委託し、先生向けの研修を実施して、先生が子どもの権利を学ぶ時間を設けるべき。
- 学校以外では、子どもの権利に関する擁護機関、つまり学校とは独立した、解決までサポートを行う機関を設置してほしい。具体的には、既にどの自治体にもある、子どもの危機管理課にサポートをしてほしい。また、今のスクールロイヤー制度は教育委員会が弁護士を雇用していて利害関係が生じやすいので、市役所の危機管理課が雇うことで中立な立場になるのではないか。子どもの最善の利益を確保するため、子どもが無償で相談できるようにしてほしい。
- そして、生徒指導提要で校則の定義について述べている部分で、「子どもの権利に反しないものである」と明記してほしい。また、「校長が定めるもの」との記載があるが、校長だけでなく、生徒・保護者・地域住民なども校則の決定に関われることを、明記してほしい。また、校則の学校のホームページ等への公開を、義務化してほしい。
「教育格差」について
アンケート結果
- 「家庭環境や住んでいる場所によって教育格差を感じたことがありますか?」という質問に対して、約半数以上の子ども若者が教育格差を感じていることが分かった。
- 教育格差を感じた瞬間について、特に家庭の収入の差で教育格差を感じたという人が多かった。また、経済的理由により、留学や部活動を断念したという人たちもいた。また、教育格差を是正するための解決策として、高校や大学を無償化にするという意見が多かった。
提言
- 教育費を無償化してほしい。親の所得や生まれた場所、そして住んでいる場所によって進路が狭まってしまうという格差をなくしてほしい。
- 日本では、子どもたちが社会に対して声を上げるということに躊躇してしまう傾向があると感じるので、子どもが意見を伝えられる場がもっと増えてほしい。
- 意欲的に意見を伝えるだけでなく、全ての子どもが声を上げることができ、それをしっかり受け止めて実現できるこども家庭庁になってほしい。
「子どもの心と体の健康」について
アンケート結果
- 「子どもの心の体の健康について今、日本の政治家に解決してほしいと思う社会問題を1つだけ選んでください」という質問に対して、「子どもの自殺や精神疾患、心の病気」や「児童虐待」などの、子どもの命に関わる問題を解決してほしいという意見が40%だった。また、多様性や受動喫煙の問題を解決してほしいという意見も多かった。
- 上記の社会問題について、「子どもの意見を聴きながら、こどもとおとなが一緒になって解決していった方がいいと思うか?」という質問に対しては、「とても思う」「思う」合わせて70%だった。
提言
- 子どもの権利を守り、子どもの権利を守るおとなのパートナーを育てるために、子どもの権利を学校やその他の教育機関で教えてほしい。子どもの権利を使いこなせる子どもを育てるべき。
- 具体的には、小学生以下は、絵本、紙芝居、劇など視覚的な情報を取り入れながら、積極的に学べる姿勢を育むことが大切。中高生は、調べ・探求学習を行い、発表形式で意見表明を行うことが望ましいのでは。
- 子どもが相談した時にちゃんと向き合うことと、解決まで手を離さないことを約束してほしい。
「子どもの意見表明」について
アンケート結果
- 悩みを相談したり助けを求めたりする方法についての質問で、今の子どもたちがよく使っているスマホやタブレット、一番話しやすい家族、他の人に知られないかたちで相談できるSNSなどの方法がいいとの意見が多かった。
- また、悩みを相談したり助けを求めたりする方法について、「知っているけれども使おうと思ったことはない」という子どもが半数だった。また、「相談する方法を知らない」という回答も全体の4分の1もいた。
- おとなに意見を伝えやすい方法について、「アンケート」と「LINE」が最多だった。次いで「直接話す」「手紙」「学校の端末」などが多く、SNSと回答した人は少なかった。
提言
- 悩みを相談したり、意見を言ったりする方法として、学校で配られるタブレットに、相談機関につながるアプリを入れてほしい。また、LINEなどの子どもたちが普段よく使っているツールで、相談できる先があるといい。
- アンケートを信頼性のおけるものに変えてほしい。そのため、子どもたちが、話した内容の秘密が守られるのだと感じられるように、個別に話を聞く機会を設けたり、アンケート実施時に秘密を守るということをきちんと説明してほしい。
- 子どもが気軽に意見や相談できるよう、学校の先生が、子どもに相談できることや相談先についてもっと発信してほしい。
- おとなに対して、子どもが意見表明をできる機会を広く設けてほしい。親や相談所のおとなは、子どもたちの意見を最優先にして意見を聞いたり、子どもがどうしたいかなども聞いてみてほしい。
- 現在のこども基本法制では独立した、行政の活動を監視する仕組みが欠けているので、子どもコミッショナーを設立してほしい。
後半は子どもたちと参加者とのグループトークを行い、アンケート結果についてやプロジェクトに参加した理由や感想など、様々な質問がかわされました。
そしてこども家庭庁の佐藤勇輔さん(こども家庭庁 長官官房参事官 総合政策担当)から、最後に感想をいただきました。
- 大事なキーワードが聞けた。例えば「勇気を出して伝えたことを、おとなはまずちゃんと受け入れてほしい」「子どものことを信頼できないおとなは、子どもから信頼されない」など。本当にそう思うし、すごく大事なこと。
- 去年4月にこども基本法ができ、12月にはこども大綱という日本で初めての「こども政策、これを見ればわかるよ」という政府の方針を作った。その中で、今日みなさんが言ってくれたことも結構入っている。例えば、校則の見直しについて、重要なことの項目の1つとして掲げている。子どもや保護者の声を聞くのが望ましいので、好事例を広く周知するということを書いていて、これからどんどん広がっていくかと思う。
- 「子どもの権利を学校で教えてほしい」といった意見について、学校の先生向けの研修を行っている機関とコラボし、学校の先生たちが学校の中で行う研修の教材で、こども基本法・こども大綱・子どもの権利条約について説明する動画を作成し、先週公表した。そのような取り組みもどんどん広げていきたい。
- コミッショナーについて、自治体の権利擁護機関を広げていくために、こども家庭庁でどんな機関が自治体にあるのか、どのような活動をされているのか、その中でいい事例を広げていくことを、これからやろうと思っている。国レベルで子どもの声で政策を変える機関として「こども家庭審議会」というおとなレベルの会議体が既にあり、こども家庭庁から独立して、総理大臣・こども家庭庁長官・関係省庁に意見を言う権限を持っている。子どもの声をどうやってこども家庭審議会に繋げていくか、メガホンプロジェクトの子どもメンバーのみなさんでも考えてみてくれたら嬉しい。
今回はオンライン開催ということで、発表の前にグループで何度もミーティングやリハーサルを繰り返し、参加者の少ないグループは動画を準備したりと、子どもたちは様々な工夫を凝らした発表をしていました。また、この報告会が今年度の子どもメガホンプロジェクトの最終活動ということもあり、報告会の後はお疲れさま会をしました。それぞれの感想を話す子どもたちは、充実した笑顔であふれていました。
2023年度の子どもメガホンプロジェクトの活動は一旦これにて終了しました。来年度の活動として、直近では、アンケートの結果と子どもメガホンプロジェクトの子ども・おとなメンバーと、広げよう!子どもの権利条約キャンペーン全体で提言書を作成し、日本政府が子どもの権利条約に批准した、4月22日に公表予定です。2024年度も子どもたちと一緒に、子どもの権利を大切にする社会の実現に向け活動してまいります。
当日の運営メンバー:(組織名、五十音字順)
岩附、杉山、成田(ACE)、武田、村上、山内(SCJ)、広瀬(FTCJ)、高橋(KNC)山下(WVJ)